借金返済 債務整理|四日市市民の怒りの住民訴訟

入院時
下痢
原因

主 文

1原告らの請求を棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第1当事者の求めた裁判

1原告ら
(1) 被告B,被告D,被告Eは,各自四日市市に対し,4億8423万円及びこれに対する被告Bについては平成13年2月23日から,被告D及び被告Eについては同月22日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 被告B,被告Dは,各自四日市市に対し,6億3974万円及びこれに対する被告Bについては平成13年2月23日から,被告Dについては同月22日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3) 被告B,被告Cは,各自四日市市に対し,4億4702万円及びこれに対する被告Bについては平成13年2月23日から,被告Cについては同月22日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4) 被告B,被告C,被告Fは,各自四日市市に対し,423万円及びこれに対する被告Bについては平成13年2月23日から,被告C及び被告Fについては同月22日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(5) 被告Jは,四日市市に対し,2億7900円及びこれに対する平成13年2月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(6) 被告Iは,四日市市に対し,7038万円及びこれに対する平成13年2月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(7) 被告Gは,四日市市に対し,1070万円及びこれに対する平成13年2月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(8) 被告Hは,四日市市に対し,810万円及びこれに対する平成13年2月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(9) 被告Aは,四日市市に対し,4700万円及びこれに対する平成13年2月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(10) 被告四日市市長が,被告らに対し,(1)ないし(9)項までの請求を怠ることが違法であることを確認する。
(11) 訴訟費用は被告らの負担とする。
(12) (2)ないし(9)項につき仮執行宣言
2被告ら
(1) 本案前の答弁
1本件訴えを却下する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
(2) 本案に対する答弁
主文同旨

第2事案の概要等

1本件は,四日市市の住民である原告らが,四日市市土地開発公社(以下「公社」という。)の理事長等が不必要な土地購入,違法な違約金契約,違法な飲食と接待をしたことや,市会議員が不必要な土地購入に介入したことなどが四日市市に対する不法行為に該当するとして,被告四日市市長に対しその損害賠償の請求をしないことの違法確認と,四日市市長である被告Aに対しその損害賠償を請求しないことによる四日市市への損害賠償,公社の理事長等や市会議員に対し四日市市への損害賠償を求めた住民訴訟である。
2争いのない事実等
(1) 原告らは,四日市市の住民である。
被告Aは平成8年度から四日市市長であり,公社の設立団体の長として,公有地の拡大の推進に関する法律19条により公社の業務を監督し,命令する権利と義務を有する。
被告Bは,平成2ないし4年度(ただし,平成4年度は9月4日まで。)の公社の理事長であり,平成4ないし8年度(ただし,平成4年度は9月5日から。)の副理事長であった。
被告Cは,平成4年度(ただし,9月4日まで。)の公社の副理事長,平成4ないし8年度(ただし,平成4年度は9月5日から。)の理事長であった。
被告Dは,平成元年度ないし3年度の公社の副理事長であった。
被告Eは,平成元年度,平成2年度の公社の常務理事であった。
被告Fは,平成8年度の公社の常務理事であった。
被告Gは,平成6年度の公社の事務局長であった。
被告Hは,平成7,8年度の事務局長であった。
被告I及び被告Jは四日市市議会議員であった。
(2) 公社は,四日市市が公有地の拡大の推進に関する法律10条に基づき設立した法人である。
公社は,四日市市からの依頼事業,公社プロパー事業のために土地を購入し,保有している。
(3) 公社は,金融機関から借り入れて土地を購入するが,四日市市はその借り入れにつき500億円の限度で保証している。
公社の金融機関からの平成12年3月時点の借入額は約360億円であり,平成12年3月時点で公社が保有する土地の簿価(土地の購入価格に金利等の経費を加算した額で,金融機関からの借入額に相当する。)は約373億円であるが,その評価損は約112億円である。
(4) 四日市市依頼事業用地の平成11年度の帳簿価格は合計46億0239万4613円であるのに対し,評価額は19億2051万1514円であり,差損は26億8188万3099円であり,公社プロパー事業用地の平成11年度の帳簿価格は169億5683万6055円であるのに対し,評価額は84億4383万5431円であり,差損は85億1300万0624円である。
(5) 監査請求と監査結果
原告らは,平成12年11月24日に,四日市市監査委員に対し,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの,以下同じ。)242条1項に基づき,被告らが四日市市に対し損害賠償することと四日市市は不法行為者に損害賠償請求をすることなく公社の差損につき負担してはならないことの監査請求をした(甲2)ところ,同監査委員は,平成13年1月15日に公社の職員は住民監査請求の対象にならないとの理由で原告らの監査請求を却下した(甲1)。
3原告らの主張
(1) 公社の土地の簿価価格には,いずれも公社職員らが接待の相手方と料亭やスナックで飲み食いしたり,ゴルフ接待をしたり,理事らに法的根拠なく贈り物をしたというように全く不必要な諸経費が含まれており,また,これらの土地の中には,購入当時の鑑定額より高い金額で購入された土地や必要性が確かめられないまま借金をして購入した土地が含まれており,そのため,購入価格に長年支払われた金利,上記の不当な諸経費が帳簿価格に算入されている。
四日市市依頼事業とプロパー事業の差損の合計は111億9488万3723円に上る。
被告四日市市長は,このような違法な土地購入をして公社に損害を与えた公社理事や不必要な土地購入に不当に介入した四日市市議会議員らや違法な飲食をした者に責任を取らせることなく,四日市市が税金を投入して差損を支払うと言明している。
(2)1不必要な土地購入
別表1記載の土地のうち,橋北土地区画整理事業用地の26筆(平成2年度購入),近鉄桜駅広場用地10筆(平成2,3年度購入),塩浜波木線用地の2筆(平成5年度購入),鈴鹿山麓研究学園都市用地・下海老町東山2筆(平成3年度購入)旧第一勧業銀行跡地2筆(平成6年度購入)及び別表2の土地のうち,番号13(平成2年度購入),15,(平成2年度購入),17(平成5年度購入),19(平成6年度購入),20(平成6年度購入),21(平成6年度購入),22(平成6年度購入),24(平成7年度購入),25(平成7年度購入),26(平成7年度購入),27(平成8年度購入),31(平成3年度購入),32(平成3年度購入),33(平成3年度購入)の各土地は全て購入する必要性がないのに購入した土地である。
各年度の公社の理事長,副理事長,常務理事であった被告らは,公社がこれらの土地を購入することを決定し,又は同意し,公社及び公社の連帯保証人たる四日市市に後記の損害を与えたのであるから,これらの決定,同意は,四日市市に対する不法行為に該当する。
これらの売買のうち,橋北土地区画整理事業用地の26筆には,四日市市議会議員である被告Jが,別表2の番号33には四日市市議会議員である被告Iが,公社に対し購入するよう強く働きかけるなど,違法に介入したのは不法行為に該当する。
2違法な違約金契約
公社は,平成3年7月24日,K,Lと土地売買契約を締結し,その際,公社は,K,Lに対し,「替地として平成4年2月28日までに農地5反と山林1町を提供する。
期限までに替地を提供できないときは,違約金として農地反当たり500万円,山林反当たり600万円を支払う。
替地については,期限終了後も完全履行できるよう努力する。」などという確約書を作成した。
そして,公社は期限までに代替地を提供することができず,平成4年6月10日,Kに8500万円,Lに5100万円を支払った。
その後,公社は,K,Lに代替地を提供した。
公社は,平成9年10月,K,Lを被告として違約金1億3600万円の返還を求めて訴えを提起したが,公社は敗訴した。
公社が,違約金を1億3600万円も支払うことを確約すること自体が背任行為であり,さらに代替地を遅れて提供しても違約金を一切返さなくてもよいとの確約をすることも背任行為といわざるを得ない。
これらの違法な違約金提供により,公社は1億3600万円の損害を被ったが,これらの損害金は土地の簿価に加算され,差損金となり,公社の保証人たる四日市市の負担となることは明白である。
この違法な違約金契約を締結した平成3年度の公社の理事長である被告Bと副理事長である被告Dは四日市市に損害賠償する義務がある。
3違法な飲食と接待
公社が平成6ないし9年度までに使った食糧費,交際費の内訳は別表3ないし5のとおりであり,公社では,スナック接待,料亭接待が常態となっており,公社,議員,自治会,地権者は爛れた関係にある。
特にスナックでの協議が60回もある。
スナックでは,正常な協議ができるとは到底いえない。
飲ませ食わせて協議をするのは,議員が市民の立場で判断することや自治会の幹部が自治会員のために判断することを不可能又は困難にさせ,違法であるといわざるを得ない。食糧費の実情は次のとおりである。
ア行先(平成6年度から平成9年8月まで1回につき1万円以上のもの)スナックは約65回,料理屋,レストランなどは120回,カラオケは1回。
イ2次会,3次会が多い。
ウコンパニオンを使ったことが24回と多い。
エ2,3人で行った回数が27回である。
オ酒食の接待の常態化
新保保工業団地のための飲食約80回,おみやげ約70回,金額約900万円。
ハイテク工業団地のための飲食45回,おみやげ15回,金額約270万円。
南小松工業団地のための接待15回,金額150万円。
その他と目的不明のものは総額約630万円。
カゴルフ接待4回(別表4のとおり)
これらの飲食費,交際費(ゴルフ接待,手土産)は,全く必要ない経費であり,違法であるが,すべて土地の簿価に含まれており,上乗せされ,差損に加算されている。
公社の保証人たる四日市市の債務にもなっている。
公社の年度別食糧費,交際費のうち不必要と判断される費用は別表3のとおりであり,平成6年度1070万2690円,平成7年度596万5221円,平成8年度214万7428円である。
その詳細は,別表5のとおりである。
1ないし176が食糧費であり,301ないし439が交際費である。
平成6年度から平成8年度の公社の理事長,副理事長,常務理事,事務局長が不必要な食糧費,交際費を支出することに決定・同意したことは,公社と四日市市に対する不法行為に該当し,四日市市に対し損害賠償する義務がある。
(3)1平成2年度から平成8年度の公社の3役は次のとおりであり,これら3役が各年度の土地購入と食糧費,交際費の費消を決定したものであり,これらの四日市市の損害を賠償する責任がある。
理事長副理事長常務理事事務局長
平成2年度BDE
平成3年度BD
平成4年度BC
平成5年度CB
平成6年度 CB  G
平成7年度CB  H
平成8年度CBFH
2平成2年度の損害額
土地差損
ア別表1の橋北土地区画整理用地2億7900万円
イ別表1の近鉄桜駅前広場用地の城東町65681906万円
ウ別表2の番号134977万円
エ別表2の番号151億3640万円
損害合計4億8423万円
3平成3年度
土地 差損
ア別表1の近鉄桜駅前広場用地(城東町6568を除く)
1億5152万円
イ別表1の塩浜波木線用地1億2251万円
ウ別表1の鈴鹿山麓研究学園都市用地(下海老町東山2筆)
1739万円
エ別表2の番号31,32,332億1232万円
オ違約金契約による損害1億3600万円
損害合計6億3974万円
4平成5年度
土地差損
ア別表1の阿倉川西富田線用地5484万円
イ別表2の番号171898万円
損害合計7382万円
5平成6年度
土地差損
ア別表1の旧第一勧業銀行跡地2億5135万円
イ別表2の番号19ないし224477万円
ウ食糧費,交際費費消の損害1070万円
損害合計3億0682万円
6平成7年度
土地差損
ア別表2の番号24,25,266042万円
イ食糧費,交際費費消の損害596万円
損害合計6638万円
7平成8年度
土地差損
ア別表2の番号27209万円
イ食糧費,交際費費消の損害214万円
損害合計423万円
(4) 被告らの責任
1被告四日市市長と被告Aの責任
被告四日市市長は,他の被告らが以上の不法行為により四日市市に損害を与えているにもかかわらず,損害賠償の請求を怠っているのは違法である。
四日市市長の被告Aが,上記の請求を怠っている間に公社の金利がかさみ,四日市市の債務負担は増え続けている。
被告Aの市長就任3年目である平成10年度に請求すれば,少なくとも,15億7597万円の約3%に当たる4700万円の損害を防止できた。
したがって,被告Aは,四日市市に対し,4700万円の損害賠償義務がある。
2公社の理事長,副理事長,常務理事であった被告らの責任
公社の理事長,副理事長,常務理事であった被告らは,各年度の土地購入,違約金契約及び食糧費,交際費の支出に関し,公社の最高責任者として決定し,四日市市に損害を与えたのであり,いずれも四日市市に対し不法行為責任を有する。
3公社の事務局長たる被告G,被告Hの責任
公社の事務局長たる被告らは,食糧費,交際費の専決権者として,これらの支出を決定し四日市市に損害を与えたのであり,各年度の支出につき四日市市に対し不法行為責任がある。
4市議会議員として土地購入に介入した被告I,被告Jの責任
被告Iと被告Jは,公社の土地購入に関し,不当に介入し,公社にとって不必要な土地を購入させ,四日市市に損害を与えたものであるから,四日市市に対し不法行為責任がある。
(5) 被告らの四日市市に対する不法行為についての補足説明
1公社の理事である被告らの行為,議員である被告らの行為は,四日市市に対する不法行為といえる。
公社は,公有地の拡大の推進に関する法律10条に基づき,四日市市により四日市市のために公有地となるべき土地等の取得・造成・管理等を行わせるため設立された四日市市の100%出資による法人である(同法13条)。
公社の理事及び監事は,四日市市の長が任命し,解任することができる(同法16条)。
実績として四日市市の助役が公社の理事長,副理事長に就任し,部長級が常務理事に就任し,市議会議員が理事に就任してきた。
公社の財務会計に関する事項はその設立者である地方公共団体の長の承認を受けなければならない(同法18条)。
四日市市長は,公社の業務の健全な運営を確保するため必要があると認めるときは,公社に対し,その業務に関し必要な命令をすることができる(同法19条)。
監査委員が必要があると認めるときは公社の財務に関する事務の執行につき監査することができる(地方自治法199条7項,同法施行令140条の7)。
四日市市は,公社の債権者である金融機関に対し,平成11年度において500億円(平成12年度に375億円に変更)を限度とする債務保証を行っている。
平成12年度に保証限度額を375億円としたのは,平成11年度末の公社の負債総額が370億円であったからであろう。
当初から公社が負担すると予想される全債務を銀行に対し保証してきた。
以上のとおり四日市市と公社は,ほとんど同じ法人といってよいほどの緊密な関係にあり,ただ法形式上別の法人としているにすぎない。
法が別法人にしている理由は,地方公共団体の公有地の拡大,計画的な推進を図るため,当該公共団体に代わって先行取得するために設けられた技術的な措置にすぎず,本来それは公共団体の行政の範囲に属する事柄である。
よって,公社の職員あるいは理事として違法行為をして公社に損害を与えることはそのまま四日市市に損害を与えると認識することが可能であり,公社の理事であった被告らが公社に不法行為を与えたことはそのまま四日市市に対する不法行為といえる。
2不法行為による公社の債務の増加はそのまま四日市市の債務の増加となるから,相当因果関係がある。
被告らが,不必要な土地を高い価格で購入した場合,被告らが無駄な飲み食いをした場合,接待で無駄に飲み食いをさせた場合,当然公社が金融機関から借用して売主や飲食店に支払うのであり,公社の金融機関に対する債務や金利は増加し,四日市市の保証債務も増加する。
本件の場合,公社は大幅な債務超過となっており,四日市市が負担しなければならなくなることは明らかであり,被告らが四日市市に損害を与えることは十分に認識可能であった。
特に平成5ないし8年度は,バブルが完全に崩壊した後であり,地価も大幅に下落している時期であり,しかも公社の銀行など金融機関に対する債務も400億円台になっており,公社の赤字も明白な時期に,全く見通しもなく,不必要な土地を高く購入したり,違法に高額で無駄な飲み食いをするのは,公社はもちろん四日市市に負担をかけることは十分予想可能である。
4被告らの本案前の主張
(1) 住民訴訟の対象は普通地方公共団体の執行機関又は職員の違法な財務会計行為又は怠る事実に限られる。
しかるに,原告らが主張する被告らの行為は,いずれも公社の役職員の業務行為であるか,公社の役職員の業務行為に対する働きかけであって,住民訴訟の対象とならない。
(2) 住民訴訟を提起するには適法な住民監査請求を経由していなければならないが,平成13年1月15日,原告らの監査請求は住民監査請求の対象に該当しない不適法なものとして却下されている。
したがって,本訴請求は適法な住民監査請求を経由していない。
(3) 原告らが被告らに請求している損害賠償の原因であると主張している土地売買契約は一番新しいものでも平成8年度のものであり,違約金契約は平成4年6月10日に完了しており,食糧費・交際費の支出は一番新しいものでも平成9年度のものであり,いずれも,原告らが平成12年11月24日になした住民監査請求の1年以上も前に終わっており,原告らの住民監査請求は請求期間を徒過している。
5被告B,被告C,被告E,被告D,被告I,被告J,被告G,被告Hの主張(1) 原告らの主張は争う。
(2) 原告らが主張している不法行為は,不必要な土地購入,違法な違約金契約,違法な飲食と接待といずれも公社に関する財務会計行為である。
ただ,それによって公社が被った損害は,保証契約を通じて四日市市の損害になるというだけのものである。
このような損害賠償は認められるべきではなく,仮に認められるとしても,四日市市が保証債務を履行すれば四日市市は公社に求償権を取得するのであるから,結局は四日市市の損害は否定されるべきである。
(3) 仮に,原告らの主張する被告B,被告C,被告E,被告D,被告I,被告J,被告G,被告Hの行為が四日市市に対する不法行為となるとしても,同被告らは,本訴において消滅時効を援用する。
被告四日市市長は,被告B,被告C,被告E,被告D,被告I,被告J,被告G,被告Hの行為のなされた年度の決算時期に「損害及び加害者」を知ったものである。
6被告四日市市長,被告A,被告Fの主張
(1) 原告らの主張は争う。
(2) 四日市市の場合,地方公営事業たる四日市市水道局と法人格を与えられている公社があるが,前者にあっては,企業局は地方公共団体という法人の一機関であって,法律的取引の主体となり得ず,取引によって発生した権利・義務は全て法人たる四日市市に帰属するのに対し,後者にあっては,公社が地方公共団体によって設立されたものであっても,地方公共団体たる四日市市とは別個の独立した法人格を持っているから,法律的取引の主体として登場し,取引によって発生した権利・義務は全て法人たる公社に帰属する。
したがって,被告らの行為が四日市市に対する不法行為であるとの主張は失当である。
(3) 四日市市が保証債務を履行すれば,四日市市は公社に求償権を取得するのであるから,四日市市に損害はない。

第3当裁判所の判断

1被告らの本案前の主張について
(1) 被告らの本案前の主張(1)について
原告らの請求は,1四日市市が被告F,被告B,被告C,被告E,被告D,被告I,被告J,被告G,被告Hに対し不法行為に基づく損害賠償請求権を有するところ,被告四日市市長がその損害賠償請求権の行使を怠ることが違法であることの確認を求めるもの,2これらの怠る事実に係る相手方に対し不法行為に基づく損害賠償の請求を求めるもの,3四日市市長である被告Aに対しこの損害賠償請求権を行使しないことによる損害の賠償を求めるもの,4被告四日市市長が被告Aに対する3の損害賠償請求権の行使を怠ることが違法であることの確認を求めるものであるが,1の請求は地方自治法242条の2第1項3号,2の請求は同法242条の2第1項4号後段,3の請求は同法242条の2第1項4号前段,4の請求は同法242条の2第1項3号に基づくものであって,いずれも適法であると解される。
したがって,被告らの本案前の主張(1)は採用できない。
(2) 被告らの本案前の主張(2)について
被告らは,「原告らの監査請求が却下されていることから,原告らの本訴請求は適法な監査請求を経ていない。」旨主張するが,監査請求が客観的には適法なものであったのに,監査委員が誤ってこれを不適法なものとして却下した場合には,これに引き続いて提起された住民訴訟は,監査請求前置の要件を満たすものと解するのが相当である。
本件監査請求の内容(上記争いのない事実等(5))は,上記(1)の説示にかんがみれば,適法なものということができる。
したがって,被告らの本案前の主張(2)は採用できない。
(3) 被告らの本案前の主張(3)について
被告らは,「原告らの監査請求が監査請求期間を徒過したものである。」旨主張するが,怠る事実に係る監査請求については期間制限の規定の適用はないと解される(最三小判昭53・6・23集民124号145頁参照)から,原告らの監査請求は監査請求期間を徒過したものとはいえない。
したがって,被告らの本案前の主張(3)は採用できない。
2被告F,被告B,被告C,被告E,被告D,被告I,被告J,被告G,被告Hの行為が四日市市に対する不法行為に当たるか否かについて
原告らが主張している不法行為は,不必要な土地購入,違法な違約金契約,違法な飲食と接待,不必要な土地購入への介入といずれも公社の業務に関わる行為であるが,仮に,被告F,被告B,被告C,被告E,被告D,被告I,被告J,被告G,被告Hにかかる行為があったとしても,公社に対する不法行為の成否はともかくとして,四日市市に対する不法行為は成立しないというべきである。
なぜならば,公社は,四日市市が公有地の拡大の推進に関する法律10条に基づき設立した法人であって,四日市市とは別個の独立した法人格を持っており,公社の業務に関わる行為が違法で公社に損害を及ぼし,そのために公社の財務状況が悪化したといっても,それがただちに四日市市の損害であるとはいえないからである。
このことは,公社が四日市市の100%出資による法人であること(公有地の拡大の推進に関する法律13条参照),公社の理事及び監事は,四日市市の長が任命し,解任することができること(同法16条参照),実績として四日市市の助役が公社の理事長,副理事長に就任し,部長級が常務理事に就任し,市議会議員が理事に就任してきたこと(弁論の全趣旨),公社は,毎事業年度,予算,事業計画及び資金計画を作成し,当該事業年度の開始前に,四日市市長の承認を受けなければならないこと(同法18条参照),四日市市長は,公社の業務の健全な運営を確保するため必要があると認めるときは公社に対しその業務に関し必要な命令をすることができること(同法19条参照),監査委員が必要があると認めるときは公社の財務に関する事務の執行につき監査することができること(地方自治法199条7項,同法施行令140条の7参照),四日市市が,公社の債権者である金融機関に対し,平成11年度において500億円(平成12年度に375億円に変更)を限度とする債務保証を行ったこと(争いがない。)などの事情を勘案しても,左右されるものではない。
公社の業務に関わる行為が違法でそれが不法行為を構成するものであれば,公社がその不法行為を行った者に損害賠償を請求すべきものである。
3被告四日市市長の怠る事実の有無等について
上記のとおり,被告F,被告B,被告C,被告E,被告D,被告I,被告J,被告G,被告Hの行為が四日市市に対する不法行為であるとはいえないから,被告四日市市長が同被告らに対し損害賠償を請求しないことが違法であるとは認められない。
したがって,四日市市長の被告Aにも不法行為は認められず,被告四日市市長が被告Aに対し損害賠償を請求しないことが違法であるとも認められない。
4以上によれば,原告らの請求は理由がないからこれを棄却すべきである。
よって,主文のとおり判決する。

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